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感想「南京事件」

「南京事件」 秦郁彦 中公新書
古本屋で見かけて、この事件についてまとまった資料に触れたことがなかったので、読んでみることにした。結局、南京大虐殺の存在に対する肯定派と否定派の争いは、資料の解釈の違いになるわけで、1冊本を読んだところで、所詮、その本の解釈を読んだに過ぎないから、どちらが正しいと判断が出来るわけはない。本書は双方の主張に目くばりしつつ事件を再構成しており、信頼に値するように思えるけれど、俺は戦前の日本の大陸進出自体、侵略と考えている人間だから、あらかじめ見方にバイアスがかかっていることは否定しない。その考え方からすれば、仮に双方に同等な責任があったとしても、攻め込んでいるのが日本である以上、より責任を問われるべきは日本ということになる。
ともあれ、本書は結論として、具体的な数値はともかく、南京で日本軍が相当な規模の極めて非人道的な行為に及んだのは間違いないとしている。その結論以上に示唆的と思ったのは、それが起きた背景に、周囲の状況を全て都合よく解釈し、充分な準備を怠ったまま勢いに任せて無謀な作戦に乗り出した、理性を欠いた陸軍の姿勢があったという指摘。色々な点で、今、小泉や石原やその取り巻きがやろうとしている、自衛隊の海外派兵も含めた強権的な「改革」の進め方を連想した。陸軍の暴走に対して、昭和初期の庶民は南京陥落を祝ったくらいだから、無力だったどころか、一体になって浮かれていた。その辺も、小泉ブームが起きた今の日本と似通っているような。時代背景が違うし、情報統制もあったから、戦前の人々の行動を、今の視点でむやみに責めることは出来ないとは思うけど、今の日本人が同じことをやったら、言い訳の余地はない。どこかで歯止めがかからなくちゃいけないはずだが、かかることはないんじゃないかという虚無感を感じる昨今。

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