感想「アシッド・カジュアルズ」
「アシッド・カジュアルズ」 ニコラス・ブリンコウ 文春文庫
1995年刊の、「マンチェスター・フラッシュバック」の作家のデビュー作。
マンチェスターを舞台に、一癖ある登場人物たちが入り乱れる、スラップスティックな犯罪もの。「マンチェスター・フラッシュバック」に較べると、燥的で華々しく、イメージが少しちがったが、その分、気楽に愉しく読めた。切なさのようなものはあまりなく、コミカルに最後まで突っ走る。また、80-90年代のイギリス文化(ロックやレイヴなど)への言及が多く、スタイリッシュな小説でもあるが、人間味があり、空疎な感じがしない。著者自身が生活していた地方都市が舞台になっていることが、地に足が着いて感じられる一因かも知れない。
ところで読んでいて、妙に映画「ケミカル51」が思い出された。あれはリバプールが舞台で、イギリスの地方都市という点では似たようなもんだし、微妙に人物設定が似てたりもする。登場人物が、あの映画の出演俳優にかぶって見えて、ジャンクはロバート・カーライルで、クロスはサミュエル・L・ジャクスンが演れば、完璧じゃないか、とか思った。思い込みなんだろうけど、そういうタイプのイギリスを舞台にした犯罪小説の流れがある、という風にも考えられるのかな。
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