感想「妖精」
「妖精」 カーター・ブラウン ハヤカワ・ポケミス
ダニー・ボイドもの。ボイドはニューヨークの私立探偵なので、タフガイが軽口叩いて痩せ我慢、みたいな、洒落っ気のある雰囲気が濃い作品になっている。場面の切替えの巧みさや、人の入替りによるプロットの複雑化など、きっちり作り込まれているし、お色気ギャグに笑っていると、終盤の突然の転調に、この小説がハードボイルドであることを思い出させられたりもする。巧い。
田中小実昌訳なので、これぞ決定版みたいな翻訳で、これがさらに愉しい。小実昌訳に欠かせない「おヒップ」とか「おヌード」とかいう言葉は、今は死語だと思うんだけど、そういう言葉抜きには、カーター・ブラウンは語れない気がする。それは、こういう作品が、今の時代に存在しないことを象徴しているかも知れない。
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