感想「炎に消えた名画」
「炎に消えた名画(アート)」 チャールズ・ウィルフォード 扶桑社ミステリー
幻の画家をめぐる、美術評論家のドタバタを描いたミステリ。ドタバタ喜劇のようでいて、ざらついた後味が残るあたり、ウィルフォードの既訳作品と同じ味わいだが、コメディ色は一番薄いかも知れない。もしくは、ネタがあまりにも途方もなさ過ぎて、コメディに見えないのか。
美術を論じる記述が全体の1/3くらいを占める。美術界を題材にしているとはいえ、専門的でストーリーの必然性からは浮いてるくだりも多く、極めて趣味的に書かれた記述のように思える。一方で、その記述のかなりの部分はウィルフォードによる捏造のわけで、ストーリーの裏側で、二重に(さらに趣味的に)読者を引っ掛けてる。人を食った作家の本領発揮といったところ。というか、これまでに翻訳された中で、ウィルフォードの食えなさぶりが、いちばんくっきり見える作品じゃないかな。帯にある「空前絶後」という文句も、あながち誇張でもない(帯の元になっている解説は、小説の背景を、よく説明してくれている)。やるな、オッサン。
こんな本が、ペーパーバック・オリジナルで出てたってのも、大した話だけど、逆に乱造されたペーパーバック・オリジナルに潜り込ませたからありえた、でたらめさなのかも知れない。
最近、モダンアートづいていたので、そういう興味深さもあった。法月綸太郎の「カットアウト」をちょっと思い出した。
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