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感想「悪者見参」

「悪者見参」 木村元彦 集英社文庫
主にサッカーを切り口に、2000年前後の数年間のユーゴスラビアをレポートした本。
一時期、大量に出たストイコビッチ関連の本は、ほとんど読んでるのだけど(本書に先行する「誇り」もハードカバー版で読んでる)、これは読み残していた。大量に出過ぎていて食傷気味だったというのがあり、この著者によるユーゴスラビア・レポート自体、「GRUN」でも読んでて、もういいよ、という気分になってたこともあり。
先日、古本屋で見つけて、なんとなく買って、読んでみたが、久しぶりだったせいか、新鮮な気持ちで読めた気がする。それに、こうしてまとまった形で見ると、この著者の行動力は本当に大したものだと思った。フリーのジャーナリストとしての気概を感じる。でも、イラクで批判を浴びたのは、こういうタイプのジャーナリストじゃないのか(すべてのフリーのジャーナリストを一括りにする訳にも行かないが)。「国」が「国」の立場と違う動き方をする、こういう人たちの行動を喜ばないのは容易に理解出来るが、普通の市民にとっては、こういう人たちのレポートは必要不可欠なはずで、それを「国」と一緒になって批判することは、自分で自分の首を絞めるに等しい行為だ。
本書についていえば、セルビアが日本を含む国際社会から、一方的に悪者扱いされたことの不当性を訴えつつ、セルビア自身の問題や、セルビアを取り巻く旧ユーゴスラビア各国のレポートも含んでいて、バランスもいい。
改めて書くほどの、目新しい話でもないが、結局、大きな問題は二つあると思うわけで、ひとつは、民族主義が台頭した状況下で、複数の民族が一つの地域で混じり合って住むことの難しさ。世界中の紛争のほとんどは、そこから来ているわけだし。それを思うと、殊更に民族主義を煽るような今の日本の風潮を見て、そういう世界の有り様から何も学べないほどバカなのか?、と思う。確かに民族主義って相対的なものだから、周辺の「国」「民族」がそれをぶち上げている時に、自分たちが静観していれば済むものでもないが、少なくとも今の日本で権力を握っている連中の、この問題への対処の仕方は、デリカシーを欠いた極めて拙劣なものに思える。
もうひとつは、「ミッシング」と同じ話になっちまうが、自国の利益の為に、簡単に他国の民衆を犠牲にする権力の存在(今回はアメリカだけでなくEUも。アイルランドのあまりにもケチくさい、酷い仕打ちの話も書いてある)。自国をこういう加害者にしないためにも、「国」とは違う視点からのレポートは必要なのだし、そういう努力を怠っていれば、自国が被害者になった時、何の正当性も主張出来ないのではと思う。太平洋戦争がまさに、そういうものだったのでは。まあ、正当性を主張出来たとしても、何にもならないのが、世界の現実なのかも知れないけれど、正当であろうとする意識だけは持ち続けるべきではないんだろうか。

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