感想「ロング・グッドバイ」
「ロング・グッドバイ」 矢作俊彦 角川書店
久々に二村を主人公に据えた小説。こんなにミステリ的な小説(ハードボイルド小説とか書くと、矢作が怒りそうだ。実際、ハードボイルドではないと思う。でも帯には、ハードボイルド探偵小説と書いてある)を書くこと自体、久しぶりか?
タイトルの通り、チャンドラーの「長いお別れ」をモチーフにした小説。ただし、こちらのロングはwrongだったりする。その辺のおちょくったようなセンスが、作品全体を覆ってもいる。それは、矢作の持ち味でもあるよな。随所に、矢作らしいセンスの良さを感じて、楽しめた。
ただ、本家同様、長過ぎる、という気はする。センスだけでは持たない長さで、プロットがややダレ気味。読んでいて、かなり早い段階で、こうじゃないかなと思った部分に、二村が気付くタイミングが遅過ぎるのも、構成が緩い印象を受ける。冒頭と結末のシーンは印象的でいいので、まるでキセルのような、と思ったけど、これも本家にも言えること。
近年の矢作が書いた小説にしては、ごくまっとうなミステリなので、少し物足りないようにも思えた。ずっと、現代の日本を(斜めから)見据えたような作品が続いていたからだろうな。
ところで、2000年の事件という設定だと思うんだけど、二村の年齢は、整合してるんだろうか。
[追記10/15]本書の原型になった「グッドバイ」については、こちら。
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 感想「イマベルへの愛」(2022.05.03)
- 感想「世界推理短編傑作集6」(2022.04.20)
- 感想「殺人は自策で」(2022.03.23)
- 感想「ロールスロイスに銀の銃」(2022.03.12)
- R・A・ラファティ(2022.02.27)
コメント