感想「取るに足りない殺人」
「取るに足りない殺人」 ジム・トンプスン 扶桑社
破綻した人間たちが、破滅へ向かってまっしぐらという、毎度おなじみのパターンだが、小説としてはあまり破綻していない感じがする。最初期で多作が始まる前の作品なので、余裕を持って書いていたということなのか。トンプスンの作品の特徴のひとつは、その破綻ぶりにあるように思っていたけど、それは乱作で引き起こされたもので、必ずしもトンプスン自身が意図したことではないのかも知れないと思った。
もっとも、乱作を選択したのも、トンプスンの意思なんだろうから、単純には決めつけられないが。後年の作品に頻出して、ある意味、小説を壊している不条理な要素は、本書にも事欠かない。そういうものを書きたいという意思が、本書にも感じられるし。
だいたい予想したように話は転がっていく。ストーリーにひねりはあるけれど、読者を驚かせるためというよりは、主人公を追い詰めて行く運命の回転のような感じ。小悪党の主人公が状況の変化によって気持ちがぶれまくるあたりの、複雑な人物像を巧く描いて、ストーリーに説得力を持たせてもいる。そういう無常感の醸成の巧みさが、この作家の身上だろうと思う。
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