感想「編集者を殺せ」
「編集者を殺せ」 レックス・スタウト ハヤカワポケミス
ネロ・ウルフもの。やっと入手して読んだ。
以前、原文で読んだ時の感想はこっち。しっかし、きれいに忘れちゃうもんだよなあ。ロサンジェルスでの騒ぎの後に、その流れですぐに話が終ってたように思い込んでて、あれれ?と思ってしまった。そういえば、いつものパターンだと、ここで一気に話が終ってしまいそうなのが、そこから推理を展開して、もうひとつひねりを入れて来たあたりに、結構手を掛けてるなあ、と感心したんだった。邦訳で読んでも、その辺の感想は変わらない。「ギャンビット」でやや物足りないと思うのは、つまりそういうあたり。ストーリーテリングとしては、質はそう変わらないと思うが、工夫の仕方、手の掛け方が、後期の作品になるにつれて、雑になっているような気はする。
ただ、本書も、「ビブリオミステリとしても出色の出来」とまで言われてしまうと(森英俊が、そういう紹介をしてるらしい)、そうかなあ、と思うが。「ウルフものの中では」「良い出来」の作品とは思うけれど。それに、本書はそもそも、「ビブリオミステリ」という形容からは、微妙にずれているような気がする。ウルフものだったら、たとえば、調査の過程で文体の問題を論じたりする「Plot It Yourself」なんか、この形容が似つかわしく感じると思うんだけど。出色の出来かどうかはともかく。
杉江松恋のあとがきは、「And Be a Villain」を未訳扱いにしているけど、後で気付いて、本書が出る前に自分のサイトで謝っているのを見掛けた。それはそれとして、このあとがきの中での「The Black Mountain」に関する指摘は、そうだったのか、という、まさに目からウロコな感じ。原文でしか読んでなくて、当方の貧弱な英語力では筋を追うのが精一杯。そこまでの裏の意味を汲み取る余裕はなかった。こっちも早川書房から近刊だそうなので、出たら日本語で読み直すことにしようと思う。(自費出版で翻訳された版は持っていない)
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