感想「『噂の眞相』25年戦記」
「『噂の眞相』25年戦記」 岡留安則 集英社新書
『噂の眞相』はまともに読んでなかったから、どういう雑誌かということを、ちゃんと知ってたわけじゃない。ただ、主要なメディアが総じて権力追従的な傾向になる中で、反権力的な姿勢を維持し続けて見えたことには敬意を払っていたし、休刊しちまった時には、大袈裟に言うと、最後の砦がなくなった、みたいな気分になったのを覚えてる。それ以外の部分がどうであろうと、権力に対して筋を通して、批判的に対峙出来るメディアは、それだけで存在意義があると思っている。というか、権力に対してすり寄ることしか出来ないメディアなんて意味がない。
本書は、あくまでも編集長が自分の視点で書いた本だから、正当化してる部分もあるだろうし、どこまで鵜呑みにしていいのかは分らないけれど、権力に対するジャーナリズムのあるべき姿についての主張は、非常に共感するものだったし、権力からの締付けが激しくなり、ジャーナリズムのあるべき姿を体現しているメディアが減っている現状に、非常に危機感を覚える。そういうメディアが減ることによって、権力が世論を操作しやすくなり、さらに権力翼賛的な風潮が強まる構図だ。いったい、どうすりゃあ、いんだろうか。
ただ、権力と対峙する上で、脇を締める必要がある、という趣旨のことを、何箇所かで書いていて、そうだよなと思った。理想さえ追求していれば、という感じで、そういう部分が甘過ぎる組織って、多い。そういう現実認識の確かさが、『噂の眞相』が続いた理由でもあったんだろうし、そういう意味では、現在の状態は、権力と対峙する側の問題でもあるんだろうと思う。
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