感想「ボトムズ」
「ボトムズ」 ジョー・R・ランズデール ハヤカワミステリ文庫
1930年代の東テキサスを舞台にした、多分にノスタルジックな小説だが、その時代の黒人に対する苛酷な差別と暴力が生々しく描かれていて、単なる「昔は良かった」的な小説にはなっていない。
ランズデールの小説を読むと(といっても、ミステリ色が強いものしか読んでないが)、残虐な暴力描写と理想主義的な正義感の同居に不思議な印象を受けるが、相反するような要素が共存することで、一面的でない、幅のある小説になっているようにも思える。それはこの本についても言える。
もう一つ、本書に関しては、ヒーローになりそうな人物が何人か登場するが、それぞれが抱える人間的な弱点ゆえに、最終的にはその誰もヒーローにはなり切れない。そうした単純な善と悪の割り切りのない語り口にも、深みを感じる。
もっともその割には、事件の真相を含め終盤は、やっぱりそういう風に来るか、という展開ではあったけどね。ひねってはいるが、先が読めてしまった。とはいえ、小説としての重厚感があって、面白く読めた。アメリカのノスタルジー小説ってのが好きではないので、出だしを読んで、どうしよう?、とも思ったのだけど。MWA賞受賞も納得(スカも多い賞だが)。
それにしても、たかだか70年くらい前のアメリカで、これだけの蛮行が行われていたってのを改めて考えると、人間性が尊重される社会というのが、いかに希少で貴重なものかということを、考えないわけにはいかない。
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