感想「鬼警部アイアンサイド」
「鬼警部アイアンサイド」 ジム・トンプスン ハヤカワポケミス
ポケミスが最近続けて出している、映像作品の小説版の最新刊。本書は有名なTVシリーズのノヴェライズ、というより、シリーズの枠組みを使ったオリジナル小説、かな? TVシリーズの方は(多分)全く見ていないが、あのトンプスンが書いた小説だというんで、読んでみる気になった。
トンプスンらしさは、ドロドロした地獄絵のような情景描写や心理描写が、そこここに見られるあたりによく出ている。ただ、通常の作品では、そうした描写が人間性や世の中への深い絶望に直結しているのに比べ、本書はそうなっていない。基本的には人間の本質に善性を見い出そうとする内容で、作品のトーンとしては、明るくさわやかですらある。トンプスンが本気でこう思っていたというよりは、TVシリーズを下敷きにしている性格上、シリーズ・キャラクターに傷を付ける訳にもいかないので、こういう話に仕立て上げた、という所じゃないかな。
あと、映像的と言えばそうなんだけれど、唐突な展開が多く、構成がやや粗いように思えた。もっとも、これはトンプスンの元々の傾向ではあるかも。
トンプスンの通常の作品に比べて、特にいい出来ではないと思う。ただ、きっちり描き込まれた小説ではあり、この種の小説としては、水準以上の作品なんじゃないかと感じた。まあ、TVシリーズを見ていた方が、より楽しめたんだろうが。
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