感想「依頼人は三度襲われる」
「依頼人は三度襲われる」 コリン・ウィルコックス&ビル・プロンジーニ 文春文庫
ウィルコックスのヘイスティングス警部と、プロンジーニの名無しの探偵の、シリーズキャラクター共演作。出た当時(1980年)、名無しは読んでたが、凄く好きなシリーズだったわけでもなかったので、あんまり気に止めてなかった。でも、以後も名無しのシリーズは延々と翻訳が出続けて、それを全部読んでるから、今になって読み残しが気になりはじめており、たまたま函館の古本屋で見つけたので、買ってしまった。
ヘイスティングス警部の方はそんなに読んでないものの、この2人のシリーズキャラには、一人称の語りの中で自分のことを喋り過ぎてるイメージがある。本書については、合作することでその傾向が薄れて、くさみが弱まっている気がする。もっとも、お互いに褒め合うような場面には、違和感を覚えないではないが。
4部構成になっており、1部と3部が名無し、2部と4部が警部の語り。プロットは途中から謀略ものみたいな方向に逸れていくが、ハードボイルド/警察小説の枠組の中で、うまくまとめてはいる。締めの4部をウィルコックスが書いていることもあり、どっちかといえば警察小説的なまとめ方なので、ヘイスティングスものの番外篇と捉えた方が適当かも知れない。まあ、基本的には、仲のいい職人作家2人が、共同作業を楽しみながらまとめ上げた娯楽篇てとこかな。
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