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感想「学寮祭の夜」

「学寮祭の夜」 ドロシー・L・セイヤーズ 創元推理文庫
ピーター・ウィムジイ卿もの。
セイヤーズは、そんなに熱心に読んでいる作家ではないので、ウィムジイ物の長篇を読むのも、これが2冊目。ハリエット・ヴェインとウィムジイのいきさつなんてのも、知識としてはある程度知ってるが、小説の中で読んではいない。それでいきなり、これを読んでしまって、良かったのかどうか。そう思ってしまったくらい、その部分が占める部分の大きい小説。
もちろん、延々と続く、謎めいたいやがらせの事件の調査が、小説の軸として存在はしているものの、浮世離れしたオクスフォードの日常風景が描かれている部分の方が、分量的にも印象的にも、ずっと大きいし、さらにそれ以上に、ハリエット・ヴェインのウィムジイに対する感情の揺れ動きが、熱意を込めて描かれている。しかも、単にこの3つの要素が絡んでいるというだけなら、「大学を舞台にした」「ロマンチックな」「サスペンス」みたいな、いかにもありがちな枠組みに見えて来る所だけれども、本書ではこの3つの要素は、どれかがどれかの付け足しや背景に過ぎないということはなく、強い必然性を持って組み合わされている。非常に完成度の高い小説と感じた。
「サスペンス」と書いたけれども、ゆったりとした筆致はむしろ、それこそ「ボートの三人男」のような、イギリスの古いユーモア小説を思わせた。それほど事件性の高い出来事が頻発するわけでもないし。もっとも、そう思っていると、みたいな所はあって、それは仕掛の一部なのだろうけど、謎解きの部分だけを見ると、やはりそれほど感銘を受けない小説ではあるかも知れない。それは、本格ミステリのひとつの流れを示しているんだろう。
エキセントリックな名探偵が、人間味のある人物像へ変貌し、社会にも組み込まれた存在になっていくという点で、エラリー・クイーンに似たものを感じたりもした。ただし、このシリーズ自体をあまり読んでいないので、そこいらは的外れな感想ではあるかも知れない。

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