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感想「地下組織ナーダ」

「地下組織ナーダ」 J・P・マンシェット ハヤカワポケミス
「狼が来た、城へ逃げろ」と同時に入手して、立て続けに読むことになった。
「狼が来た…」よりも、しばらく後の作品らしく、ずっと小説的になっているように感じた。シーンは相変らず格好いいが、人物の内面、行動の必然みたいな所に、重心が移って来ているように思う。
半端者のアナーキスト数人が集まって、在仏アメリカ大使を誘拐しようとする話で、犯罪小説として、それほど珍しくないパターンでもある。 すべてにおいて型破りな「狼が来た…」とは、かなり違った趣きにも見える。
ただ、犯罪自体は、冒頭で失敗することが宣言されている。蟻が象に踏み潰されるような身も蓋もない形で、あっさり計画は潰えていく。だから要するに、普通の犯罪小説では読み所になる、犯罪計画の遂行や破綻(または成功)みたいな部分は、本書では重要ではないんだろう。日常や体制に押しつぶされそうな鬱屈や閉塞感から、絶望的な計画に関わって行くアナーキストたちの心理こそが、テーマなんじゃないだろうか。
そして、彼らの動機が思想などではなく、そうした閉塞感にあることを象徴的に示しているのが、ナーダ(何もない)という、彼らのグループ名であり、それが本書のタイトルに据えられている所に、本書のテーマのありかを明確にしようとする意図があるようにも思える。
今日の選挙の結果なんかを見てると、そういう閉塞感を自分自身でも感じるし(改革を振りかざす連中の勝利に対して閉塞感を感じるってのを、不思議と感じる向きもあるかも知れないけどね)、そういう意味では、他人事とは思えないような気もする小説ではある。

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