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感想「栄光の土曜日」

「栄光の土曜日」 デイヴィッド・セラフィン ハヤカワポケミス
82年刊のポケミスで、たまたま入手したもの。特に期待もせず読んだが、案外拾い物だった。
フランコが死んで、スペインに民主制が戻って来た直後の、マドリッドを舞台にした警察小説。著者は、マドリッド在住が20年を越えるイギリス人(またはオランダ人)とのことで、かなりオーソドックスな作りなのは、そのためかも知れない。スペイン人が書いたら、こうはいかないように思える。
マドリッドの風景が、うまく取り入れられているが、やり過ぎてもいない。観光小説にならず、地に足が着いている感じなのは、やはり在住歴が長いからかなと思う。スペインらしい?のんびりした雰囲気と、うまく造型された登場人物像が魅力的。
それにしても、いくらのんびりしてると言っても、主人公の警視の、仕事の合間に極秘に愛人と過ごすのが日課、なんてえ生活が、本当に成り立つんだろうか。二重生活で、それぞれの所で食事もしてるから、飯も多分、食い過ぎてるし(笑)。
プロットは、独裁制と民主制のせめぎあいが重要な軸だが、著者が「外国人」だからか、どちらかに強く肩入れするような感じは薄い。どちらかと言えば、時代の変り目のマドリッドの空気を伝えることに、力点が置かれている印象を受ける。とは言っても、フランコの独裁による抑圧が終った解放感を描こうという意識は、そこここに感じ取れるが。
スペインやポルトガルが、いわゆる民主主義に移行してから、たかだか30年くらいしか経っていない、ということを考えてしまった。それに比べると、日本ははるかに恵まれてると思うが、この解放感を嫌がってる人もいるよな。小泉があんなに人気を集めてるのを見ると、独裁制に憧れてる向きも、結構多そうだし。日本の民主制は、自力で手に入れたものじゃないから、有難みも感じられないのかも知れない。

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