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感想「こちらニッポン…」

「こちらニッポン…」 小松左京 ハルキ文庫
日頃、読まない作家だが、なんとなく手に入ったので読んでみた。70年代のSF。
世界中の人間のほとんどが突然消滅してしまい、消え残った一握りの人間が、生き残るために苦闘する、という話。読んでるうちに、要するにこれは一種のシミュレーション小説なんだな、と思えて来た。現代の環境の中で少数の人間が生き残った時に、彼らが生き延びる上でどういう問題が起こりうるか、というあたりを考察するための小説。読んでないけど、「復活の日」や「日本沈没」も、もしかすると中心コンセプトはそういう所にある小説なんだろうか。シミュレーションのパターン1、パターン2、みたいな感じで。
そんなことを思いながら読んでいて、結末まで来て愕然。書いてしまうとネタばらしになるから書かないが、この結末は読者をバカにしてるんじゃないのか? それとも、ミステリと違って、謎の解明が小説の重要な要素じゃないから、これでいいのか? メタSFとか言って、妙に高く評価をする奴が居そうな結末だよな、とは思った。
作家の意図を、正しく読み取って読んではいたらしい、ということは分ったし、だとすれば重要なのは、シミュレーションの部分であって、人間が消滅したという謎の解明は、確かにこの小説の重要なテーマではないわけだが、だからといって、これが許されるんだろうか?

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「小説」カテゴリの記事

コメント

 私がコメントするというの何なのですが・・・
小松左京は、昔、「日本人はいつも四つの島に逃げ込めば許されていた。それができなくなった時が、本当に日本民族が試される時だ」と話をしていたことがありました。
 「日本沈没」がその代表作と思いますが、「復活の日」も「さよならニッポン・・・」も「首都消失」もそのテーマの流れの上にあるように思います。
 「さよならニッポン・・・」は、単行本が出た時SRで「SFファンを馬鹿にしているとしか思えない」という声があったと記憶しています。
 私は新聞連載で読んだ時意味がよくわからず、文庫で再読して「よくできているじゃないか」と思いました。というのもこれより前に書かれた、あまり有名でないある作品が似たような実験的な手法で書かれていて、そう言うのが好きな私は、結構面白かったからです。でも、正統な終わり方ではないと思います。

投稿: Moriwaki | 2005.09.26 23:05

どもです。
元々、心が狭いんで(^^;、こういう肩透かしぽい結末には、かっとなってしまう傾向があるんですが、今回はそれだけでなく、小説と言うより、シミュレーションみたいだなあ、と思いながら読んでいたら、まんまなオチだったので、あまりにも工夫がないと感じたというのもあります。実際はどうなのかは、分りませんが、意外性よりは、作家のアイディア不足の苦し紛れの結末のようで。
おそらく、小説として形を整えるための技巧と思うんですが、こんな半端なオチを付けるくらいなら、むしろ全て謎で終らせて、シミュレーションとして徹底してしまった方が良かったのに、と思ったのでした。もっとも、その辺は、当然、人によって感じ方は違うでしょうね。

投稿: wrightsville | 2005.09.27 23:35

小松左京は京大でイタリア文学を専攻しており
この作品はピランデルロの『作者を探す六人の登場人物』を意識して書かれたものです。
(オマージュといってもいいでしょう。)
『作者を探す六人の登場人物』がどういう作品かは
題名で推測できると思います。

馬鹿にしてるかどうかは、人によって受け取り方が違うでしょうが、小松左京がピランデルロ好きな事を知ってる読者なら、最初の方でピンときて、ピランデルロだなとニヤリとするとは思います。

ある小説のあとがきで(純文学の作家を目指してた)小松本人が「今の私は小説的完成度というものに、もはや関心を抱いてはいない」と宣言してますから「小説と言うより、シミュレーションみたいだなあ、と思いながら読んでいたら、まんまなオチだったので、あまりにも工夫がないと感じたというのもあります。」「これが許されるんだろうか?」こういう感想を言われても、小松左京は軽く受け流しちゃうでしょうね。
ご本人は確信犯ですからね。
「こちらニッポン…」の一番の読みどころと面白さ、そして小松が書きたかったのが「ごく少数を残して人間が消えてしまったらどうなるのか?」という部分であり、オチとかは余興みたいなものです。
上記の部分に興味をもてない読者にはなんだこれ?で終わるでしょう。

投稿: まっこり | 2012.11.21 03:17

コメントありがとうございました。
ご教示いただき、ありがとうございます。そういう背景もあるわけですね。
今読めば、多少、感想が違うかなという所はあって、作家が確信犯で書いているのを見極めて、もう少し楽しんで(というか、もう少し余裕を持って)リアクション出来たかな、という気はするのですが、この当時はダメでした。まあ、ちょっと体質的に合わない感じはあるので、それでも好感を持つまでには至らなかったかな、と思ってはいますが。

投稿: wrightsville | 2012.11.23 23:38

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