感想「The Sound of Murder」
「The Sound of Murder」 レックス・スタウト BANTAM BOOKS
最近、論創社から出た「アルファベット・ヒックス」の原書(多分。現物を自分でまだ視認していないので)。タイトルが違ってるが、奥付を見ると、1941年にアメリカで最初に刊行された時のタイトルは「Alphabet Hicks」なので、そちらを邦題に採用したというだけのことと思われる。(11/23追記 書店で現物を確認した。間違いなく、本書の邦訳が「アルファベット・ヒックス」)
なんで原書で読んだかというと、単純に持ってるから。買ってから、少なくとも15年くらい寝かせてたと思う。邦訳読む前に読んじまわないともったいないし、場合によったら、値段の高い邦訳を、読む必要はないかも、というくらいの気分で、あわてて読んでみた。
以下は感想。ネタばらしする気はないけど、勘のいい人だと話の中身の見当が付いて、つまらなくなっちまいそうなことを書くので、ちょっと空けておく。
探偵役の主人公、アルファベット・ヒックスは、やや影が薄い。アーチー・グッドウィンをちょっと渋くしたくらいの感じ。しかも、ネロ・ウルフは居ないわけなんで、キャラクター的には、やっぱりちょっと地味な小説。
プロットに関しては、うーん、こういうネタのような気がするなあ。それだったら、いやだなあと、最初の方で思ったら、やっぱりそうだった。この時代なら、なかなか思いつきにくいタイプのトリックだったのかも知れないが、現代に読むと、ちょっと苦しい。
登場人物の出し入れや話の展開は、さすがに巧みで、楽しんでは読めたけれども、あらためて邦訳は読まんでいいかも、という気はした。少なくとも2000円を超えるハードカバーの値打ちは、個人的にはないな。
ちなみにラスターマンへの言及が一カ所。ウルフもののファンへのサービス?
それと、かなり酷い反ドイツ的な一節があるのに気付いた。時代(ナチスの全盛期)と、スタウトの当時の活動を考えれば、無理もないのかも知れないが。まあ、スタウトって、そういう人なんだけど。(11/23追記 書店で邦訳を見た時に該当箇所を見て、原書も改めて確認したけど、言わずもがな、ではあっても、そこまで強いニュアンスはないのかも知れないと思い直した。もっとも、実際の所は、ちょっとよく分からない。ちなみに、さすがに邦訳で読んだ方が、はるかに細部まで内容を理解出来そうと思ったけれど、やはりちょっと、その場で買う気にはなれなかった)
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