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感想「幸運は誰に?」

「幸運は誰に?」 カール・ハイアセン 扶桑社ミステリー
「虚しき楽園」の巻末に、99年の邦訳刊行が予告されていたのに、いっこうに出なかったんだけど、ついに出た。
しかし、奇人・変人入り乱れるスラップスティックは、いかにもハイアセンらしいのだけど、いまいち物足りない。
思うに、悪役が迫力不足。中心になる2人組のチンピラだけでは小物過ぎる。一方で、より大物な悪役になりうるキャラが何人か控えているが、こちらはどれも中途半端な形で消えてしまう。なまじ、それっぽいだけに、書いている間に構想倒れになっちまったのかな、と勘ぐってしまうくらい、あっけない消え方をする。
主人公の行く手を阻む障害が、そんなような有様な上に、彼らには味方も多いので、早い段階で話の落着き所が見えた気分になってしまい、スリルがあんまり感じられなかった。
それに、この主人公たち、ハイアセンの小説にしては、あんまり破綻してなくて、普通の人間ぽ過ぎる感じ。出て来る人物の中で、本当にぶっ飛んでる雰囲気なのは、シンクレアぐらいだ。
まあ、なかなか出なかっただけに、ある意味、待ち焦がれていた本ではあり、期待が高まり過ぎてた所はあるのかも知れない。それで肩すかし気味に感じてしまったのかも。それに、とにかく愉しく読めはした。
ちなみに翻訳は、この訳者にしては、妙な所が多かったような印象。もしや、刊行の遅れの原因は、下訳者の問題だったのか? 校正ミスも目立った気がするが、扶桑社なんで、しょうがないかな。

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