感想「ラバー・バンド」
「ラバー・バンド」 レックス・スタウト ハヤカワミステリ文庫
ネロ・ウルフものの3作目。久しぶりの再読。内容はほとんど忘れていた。
ここまでの3作の中では、一番謎解きものらしい体裁を整えていて、2番目の殺人については、手掛かりの置き方がうまいなと思った。スタウトが、ミスディレクションをかなり工夫している感じ。ただ、ちゃんと読んでいないと、そこに争点があることにすら気付かず、そもそもそこがミスディレクションであること自体に気付かない可能性があるのではないかと(^^;。逆にマニアだと気付いて、はまっちゃう類いの謎解きのような気がする。
また、ここまでの作品は、1人の特異な個性の持ち主がウルフと相対するという構図が見えるけれど、本書でそれに当るのはクリヴァーズ侯爵で、彼を巡る中盤でのストーリーの転回が鮮やかだった。
ロウクリッフが初めて出て来て、後々、ウルフに虐められ続ける原因になる捜索をやらかす。この時点では、どもる癖はまだ出て来てなかったんだな。探偵たちは、ソール、フレッド、オリー、ジョニーとおなじみの面々が顔を見せている。
ロウクリッフの捜索以外にも、本書は、ウルフが家に女性を置かない理由を語る場面など、後に度々引き合いに出されるエピソードに事欠かない感じ。
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