感想「手袋の中の手」
「手袋の中の手」 レックス・スタウト ハヤカワポケミス
昨年、ペーパーバックで読んでいて、その時の感想がこれ。小説の内容についての感想は、その時と、大きくは変わらなかった感じ。ただ、ドル・ボナーが、ペーパーバックで読んだ時より、妙にかわいく描かれているように感じられた。その辺の理由を考えると、もちろん自分自身が英語を細かい所まで読み込めてない、というのはあるのだけど、それ以外にも気になる点がいくつか。
帯の「それでも私はくじけない!」って文句が、リザ・コディのアンナ・リーものが最初に訳された時の帯の「わたしだって探偵します」とかいうのを思い出させた。小説の中身なんかろくに読み込んでもいなさそうな一部の評論家に、甘っちょろいとか何だとか、必要以上に批判される原因になった文句。あれに似たようなセンスだね、という感じ。担当者が当時と同じとは思えないが、女探偵ものだと、どうしてもこういう発想になるのか?
本文での、妙にのどかな章題にも同様な違和感を覚えた。そもそも手元にあるペーパーバックには章題なんて、ないんだけど。別の版にはあるのかも知れないから、ハヤカワのセンスででっち上げたもんだと、断定する気はないが。
そういうことを言い始めると、「**嬢」とか、何だか古めかしい訳文の言い回しも気になって来る。もちろん、そもそも1937年に刊行された本。「赤い箱」と同じ年。その辺の時期のウルフものの翻訳を考えると、こんなもんかなという気はしないでもないが、現在出す翻訳としてはどうなんだろうな、という気はする。
出版社のこの本の売り方に、いろいろ疑問を感じてしまったんだが。
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コメント
確かに「**嬢」というのは、クリスティーやカーの世界ならともかく、ちょっと変な感じでしたね。
「ミス」と訳するのも好きではないのですが、「さん」でも良かったのでは。
日本語で読む限りは、初々しいというより、がんばりたいけど線が細く、正直な娘さんという印象でした。
投稿: Moriwaki | 2006.05.25 22:45
「初々しい」というのは、元々、ドル・ボナーにはかなりすれっからしなイメージを持っていて、それに対しての感想という面がかなり強いです。どこからそういうイメージを持ったのかは、よく分からず、実は単なる思い込みという可能性もあるんですが。「探偵が多すぎる」あたりを読んだ時の印象だったのかどうか。
原文はそういう先入観を持ちながら読んでいたので、細かい所があまり理解出来てない分、ドルの線の細さをうまく読み取れず、訳文で読んだ時に、そういう所が必要以上に気になってしまったかも知れない、という気はしてます。ただ、翻訳が演出過剰な気味はあるんじゃないかとも、やっぱり思ってるんですが。
投稿: wrightsville | 2006.05.27 07:22