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感想「ベルリン強攻突破」

「ベルリン強攻突破」 ダン・フランク&ジャン・ヴォートラン 新潮文庫
古本屋の100円均一で見かけて買って来て、随分長いことかかって読んでいたもの。なんせ700ページもあるし、ここんとこ、本が読めてないし。それでもやっと読み終わった。ヤレヤレ。
10年ほど前に出た当時は、本書にはあまり興味を感じなかったが、2人の著者の共作で、片方がここ数年の間に「グルーム」「パパはビリー・ズ・キックを捕まえられない」を読んで興味を持ったヴォートランだったので、今回読んでみる気になった。ただ、内容は第2次世界大戦前夜のヨーロッパを舞台にした謀略小説というから、上記の2冊が両方、不条理な犯罪小説だったヴォートランのイメージとはかけ離れていた。

しかし、読んでみると、謀略小説というイメージとはかなり違って、大河ロマン(^^;みたいな感じだった。謀略自体は、実はかなりチャチ、というか、妙にかわいらしい。その一方で、人物が特徴的で、やたらとキャラが立ってるし、歴史的な出来事が背景に置かれて、有名人も登場して来る。舞台装置も華やか(プガッティとか、デューセンバーグとか、アストンマーチンとか、高級車が走り回ったり、ツェッペリンの飛行船で大西洋を横断したり)。整理してみると、そんなに大した話でもないのに、やたらとまわりくどく進んでいくし、装飾も多くて、話の進み方がのんびりしてるあたりも、大河的。
読んでいて、デュマを思い出した。そして、一応の決着はついて話は終るのだけど、なんか中途半端な終り方だったもんで、釈然としない気分でいたら、あとがきを読むと、全5巻の構想で書かれた小説の第1巻なんだそうで、この後、1947年まで話が続くんだそうだ。確かにこれは大河小説に違いない。ちなみに、本書が邦訳された時点で、本国フランスでは第3巻まで刊行済みだったそうだが、2巻以降は邦訳されたのかな。それと、本国では4巻以降は出たのかな。

中心のストーリーよりは、むしろ装飾を楽しむ小説かなという気はした。そして、登場人物がエキセントリックなとこは、いかにもフランス。そういう過剰さが面白かった。しかし、ヴォートランのイメージからすると、随分普通の小説という気がする。どういう意図でこの本に関わったんだろうな、とは思う。もっとも、本書の重要な背景となる、ナチスやファシズムが台頭するヨーロッパというのは、ヴォートランの他の小説に見られる、権力に抑圧された閉塞した社会に通じるものであるような気はする。そこに意図があるのかも知れない。(ちなみに、本書に描かれたナチスが台頭しようとするドイツの雰囲気は、微妙に今の日本を思わせるようにも感じたが、多分、日本だけでもないんだろう)
そういえば、最初の方に出て来るホテルのボーイは、「グルーム」ぽかったな。

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