感想「鬼哭の剣」
「鬼哭の剣」 北方謙三 新潮文庫
久々に読んだ日向景一郎シリーズ(4作目)。
このシリーズは北方の他の時代小説と方向性が違って、基本的にはリアリティを追求しない、荒唐無稽な活劇小説だと思う。五味康祐とかの、いわゆる剣豪小説ってのを、ほとんど読んだことがないのだけど、こういうテイストなのかな。
このシリーズは、だいたい陰惨な話なので、あんまり好きではない。内容の割には、北方らしい、さっぱりした筆致で、かなり救われている感じもあるけれど。本書も一族皆殺しみたいなことで、どんどん凄惨な殺し合いの話になっていくから、ちょっとね。
あと、本書では景一郎よりも弟の森之助に焦点が合っていて、彼はスーパーヒーロー的なキャラではなく、悩める青少年という風だから、その分、小説に重苦しさがあって、ちょっともたれた感じもしてしまう。このシリーズの面白さは、立合いの場面の凄みや、スーパーヒーローが敵をなぎ倒して行く爽快感にあるのでは、と思ってはいるけれど、それだけで単純に割り切れない、もやっとしたものは常にあるし、本書ではそれが特に強く出ているような気がする。
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