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感想「五月革命'86」

「五月革命'86」 ジャック・ステルンベール サンリオSF文庫
サンリオSF文庫が潰れた直後くらいに、そこそこの値段で古本屋に出ていたので、タイトルになんとなく引かれて買ったもの。読まずに、ずっと放ってあった。

読んでみたら、ゲテモノだった(^^;。
大量消費社会に歯止めがかからないまま、公害病やらなんやらで、人間が滅亡しかかってる1986年の5月(本書が書かれたのは78 年)、権力者や企業のいいなりに働いて、死んでいくことのバカバカしさに目覚めた一般大衆が、一斉にサボタージュを始めるというような話で、思想的には、まんざら共感しないでもないんだけど、リアリズムを追求しているわけではなくて、極端に戯画化している分、描かれている破滅しかかった社会の描写は、相当悪趣味。
その後、革命が成就して行くシチュエーションに移行するけど、また、随分素朴な反文明主義だな、と思わせる内容。リアリズム小説じゃないから、これでもいいのかねえと思っていると、それだけでは終らない。けれども、そこの転回の仕方が、これまた、相当悪趣味(^^;。

あとがきを読むと、作者はSFというよりは、ブラックユーモアの作家らしく、筒井康隆的な作家なのかな、という気はした(筒井はあとがきでも引き合いに出されていた)。もっとも、俺は筒井に関しては、全然いい読者じゃなくて、ただの悪趣味作家と思っているから(ただし、技術的に難度の高いものを書く、アイディアと職人的な技巧には感心している)、本書の雰囲気の悪さは、まんま筒井だなと思ってしまったけど、妙にのどかになる中盤の辺りの作りなんかは、筒井ならもっとボロカスに書きそうな気もする。その方が、作品としては一貫性があって、芯が通るはず。そういう意味では本書は、プロットの整合も完成度も考えない、作者の、世の中に毒づきたいという気持ちだけで書かれた小説、という感じがする。フランス人的な割切りだなあ、という気はしないではないが。

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