感想「失われた男」
「失われた男」 ジム・トンプスン 扶桑社ミステリー
出だしから、いかにもトンプスンぽい。主人公が欠落を抱えてるところ(精神的にも肉体的にも)とか、冷笑的な筆致とか。「トンプスン読本」を読んだ今では、主人公のアル中の新聞記者という設定が、トンプスン自身を彷彿とさせるってのが分かっているから、なおさら。あまりにも、ぽいんで、これはセルフパロディなんじゃないかと思うくらいだ。
結末がとても巧い。まっとうなサスペンスの読者も、トンプスンらしいぐちゃぐちゃな小説を期待した読者も、納得させられちゃう一方で、なんとなく、はぐらかされたような気がするんじゃないんだろうか。そういう微妙な所を突いて、きっちり決めている。
でもって、決め方に、そんな底意地の悪さが感じられるあたりに、いかにもトンプスンだなあ、と思ったりもする。
それにしても、これだけパロディっぽい、ある意味、バカバカしいようなプロットなのに、きっちり絶望的な空虚感を醸し出して、完成度の高いブラックコメディ的なサスペンスを作り上げている。しかも、コメディであることと空虚感とが補完し合って、分離していない所はさすがだと思う。
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 感想「紐と十字架」(2012.05.26)
- 感想「楊令伝」12(2012.05.26)
- 感想「楊令伝」11(2012.05.04)
- 感想「ボストン、沈黙の街」(2012.05.04)
- 感想「楊令伝」10(2012.03.25)





コメント