感想「10ドルだって大金だ」
「10ドルだって大金だ」 ジャック・リッチー 河出書房新社
昨年の「クライム・マシン」に続く、リッチーの短篇集。
どれも気が利いてて、愉しく読めた。ただ、似たような傾向の作品が多いから、一度にまとめて読まない方がいいんだろうな、と思いはしたものの、そういう悠長なことが出来る柄でもなく、とっとと読んでしまったが。もっとも、そういう読み方をしても、似たような話ばかりで食傷することはなかった。やはり語り口の巧さだろうな。あと、登場人物たちの志の低さ(^^;に、やすらぎを感じる。ギラギラした所がないので、飽きない。以前読んだインタビューなんかを見ると、リッチー自身も、結構そういう傾向の人物だったようなんだけど。
中で好きなのはターンバックルものの「可能性の問題」かな。徹底したバカバカしさが良い。ちなみに、あくまでも「好き」であって、出来の善し悪しではないです。きれいにレベルが揃っていて、出来の善し悪しなんて、ほとんどないのが、リッチーだ。
しかし、「クライム・マシン」が、昨年のミステリの人気投票で1位になったと聞くと、ちょっと違うんじゃないか、という気はする。新作がよっぽど不作の年だったのか、ミステリ業界の人々も、新作を追い掛けるのにさすがに疲れ始めたのか。
やっぱり、年間ベストみたいなのには、もっとギラギラした作品の方がふさわしいと思う。一瞬で飽きられる代物だとしても、むしろそれこそが、その年の空気の反映と言えるんじゃないか、とも思うわけで。
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