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感想「眼を開く」

「眼を開く」 マイクル・Z・リューイン ハヤカワポケミス
久々のアルバート・サムスンもの。

なんだか、ここまでのリューインの作品の集大成みたいな感じの作品。リロイ・パウダーやら、アデル・バフィントンやらが、当り前のような顔をして登場して来る。でも特にそれを感じたのは、ジョー・エリスンが出て来た場面。「死の演出者」の冒頭に出て来たガキで、その時のエピソードを踏襲してもいる。
あとがきに、これが最終作なのでは?という指摘を受けたと、訳者が書いているが、そんなこととか、本書のこの終わり方を見て、そうであっても不思議はないという印象を、自分でも持った。もっとも、前作「豹の呼ぶ声」が最終作だったとしても、やっぱり驚かなかっただろうけど。

ミステリとしては、リューインの近作がおしなべてそうであるように、かなりとりとめがない。主に、特徴的なキャラクターの魅力と、ユーモラスな語り口で読ませる本だと思うが、ユーモアはかなり苦みが強く、かつてのサムスンもののような気楽さは薄れている気がする。人生の苦みみたいなものが、重く淀んでいる感じ。それと、サムスンが、これまで周囲に対して眼を閉じていたことに気付いた時の辛い思いに、切実なリアリティを感じた。これを他人事と片付けられる人間が、世の中にどれだけ居るだろうか。

「眼を開く」ことによって、サムスンはある意味、別の人生へ踏み出そうとしている訳で、それがシリーズの終了につながることは大いにあり得ると思う。「眼を開く」ことは、これまでのシリーズでのサムスンのキャラクターを、かなり広い範囲で否定することになるのではないんだろうか。
もし、終わらないとしたら、このシリーズは「探偵家族」みたいな話になってしまいそうな気もする。それはそれで、楽しいシリーズになりそうではあるけれど、ここまで築き上げて来たこのシリーズの作品世界とは、いまひとつ噛み合わない気がするな。

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