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感想「血の栄光」

「血の栄光」 ジョン・エヴァンズ ハヤカワポケミス
論創社から出た「悪魔の栄光」を読むために、すっかり内容を忘れていたので、多分、20年振りくらいで、ポケミスを掘り出して読み直した。ジョン・エヴァンズのポール・パインもの1冊目。

定石通りのハードボイルドという印象。1946年の作品だからね。スピレイン以降に隆盛を極めた通俗ハードボイルド以前の作品ということになるし、それだけ原点に近い、正統派のハードボイルドと言えるのかも。ただ、微妙に、それを茶化しているのか?、と思われる所もないではなかった。多分にニュアンス的なものなので、本当にそうなのかどうかは、分からないけれど。

ある意味、定石通りなので、話の転がり方も見当がついてしまうのだけど、プロットは、かなり工夫されてはいる。丁寧に組立てられた小説だと思う。古さは否めないかな、と思う部分もあるが、そこは多分に訳文の古めかしさによる所もあって(宇野利泰訳)、気の毒と言えば気の毒。今時の文章で訳し直されたら、かなり印象は変わるだろうな。そういう意味では、「悪魔の栄光」がどんな感じになっているか、ちょっと楽しみ。

結末で、ポール・パインはこれで良かったんだろうか、と、なんとなく思った。厳しい倫理感は時代を表しているんだろうか。もう少し後の時代の探偵なら(人にもよるだろうが)、別の結末を選択したかも知れない、という気がする。
悪くない出来の小説と思うが、主人公への共感という点では、その辺を含めて、やや波長が合わなかった感じがある。まあ、自分自身の好みも、戦後の通俗ハードボイルドの方へ寄っているのかも知れない。チャンドラーも、そんなに好きではなかったりするわけで。
(2006.11.3読了)

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