感想「煤煙」
「煤煙」 北方謙三 講談社文庫
北方は文庫でしか読まないから、正確な所はよくわからないけど、現代ものとしては、これは「擬態」に続く作品なのかな。かなり似ている雰囲気がある。これが今の北方の現代ものの方向性ということか?
主人公が破滅志向で突っ走るという基本構造は、「逃れの街」から一貫して変わっていないけど、以前はそこに、なにがしかのヒロイズムを付け加えようという気持ちがあったように思う。「擬態」と本書にも、そういう部分はないわけではないけど、どんどん希薄になっている感じ。主人公は「良識を疑われるような」行為であっても、自分の気持ちに適うなら、ためらわない。自分がそういう人間であることを自分自身で持て余しつつも、やってしまう。
そういう主人公のどうしようもない心の動きが、厚みを持って語られていて、かなり良い出来の小説と思うが、何がこういう作風の変化をもたらしたのかは考えさせられる。単に今までは抑え気味にしていたものをとっぱらって、書きたいように書くようになったということなのかも知れないけれど。
(2006.9.24読了)
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