感想「苦いオードブル」
「苦いオードブル」 レックス・スタウト ハヤカワポケミス
レックス・スタウトの非ウルフ物で、探偵はテカムス・フォックス。ただしスキナー地方検事やロウクリッフは出てくるから、世界は繋がっている。ドル・ボナーも脇役で登場する。
バランス良くまとめた、職人的な作品という印象で、軽いけど悪くない出来。ただし、謎解きはフェアだが、シンプル過ぎて、誰でも分かってしまいそうな気はする。こうでないならこうだろうという、二者択一に容易にたどり着いてしまいそうだ。
フォックスは、アーチー・グッドウィンが1人でプレーしてたらこんな感じ?、というキャラクターかな。スタウトを知る人が、スタウト自身に良く似ていると言っていたという話もあるらしい。
ところでウルフ物に「苦いパテ」という中篇があるが、本書はそれの元ネタ。というか、スタウトがこれの短縮版を雑誌に売り込んだら、要らないけどウルフ物の中篇に書き直してくれたら高く買う、と言われて出来たのが「苦いパテ」だったという話がある。本書は原題が「Bad for Business」なのに、こんな邦題になっているのは、明らかにそれを踏まえたものじゃないかと思うんだが、解説でそのことに全く触れられていないのはどういうわけなんだろう。今、「苦いパテ」を入手するのが、それほど容易ではないとしてもねえ。
訳文も、訳者が「手袋の中の手」と同じ人で、あちら同様、「嬢」がウザかったりするし。
本の作り方に、疑問を感じてしまったが、最近の早川書房がやってるいろんなことを考えれば、別に不思議でもないか。
(2007.3.16読了)
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 感想「イマベルへの愛」(2022.05.03)
- 感想「世界推理短編傑作集6」(2022.04.20)
- 感想「殺人は自策で」(2022.03.23)
- 感想「ロールスロイスに銀の銃」(2022.03.12)
- R・A・ラファティ(2022.02.27)
コメント