感想「身元不明者89号」
「身元不明者89号」 エルモア・レナード 創元推理文庫
長年原題を見て、妙なタイトルだなと思っていた(Unknown Man No89)。プリズナーNO6みたいで、SFか?とか。要は身元確認前の死体の整理番号だったのね。
主人公の行き当たりばったりぶりは、いかにもレナードのキャラクターらしく、レナードは愛読してる作家だが、要は、こういう主人公の設定に自分は共感してるんだよなと思う。成り行き任せで適当、うまく行かなくなったら、おおむねハッタリで、のらりくらりと切り抜ける。いいっす(^_^;)。
ただ、それでいて内側に譲れない何かは持っていて、それがハードボイルドな雰囲気を醸し出してもいる。結構タフガイだったりもするし。もっとも、(多分)時代が下がるほど、レナードの主人公はそんなに体裁のいい存在ではなくなっていくけども。事態の収拾に失敗したり、女性を庇護してたつもりが、逆にそっちの方がよっぽどうまく立ち回っていたり。特に後者のパターンは多くて、レナードの小説の本当のテーマは、「女は強い」なんじゃないかと思うこともあるくらいだ。
とはいうものの、本書は、彼の犯罪小説の中では比較的早い時期のもの(77年刊。すぐ前が「追われる男」。すぐ後が「ザ・スイッチ」)なので、あんまりひねくれてない。普通にロマンティックという感じ。そこが少し物足りない観はないでもないか。
でも、うまくまとまった小説ではあるし、癖があり過ぎる小悪党同士の、裏のかき合い、化かし合いも面白く、普通に読む分には充分秀作と言えるんじゃないか、とも思う。
(2007.5.14読了)
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