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感想「蜂起には至らず 新左翼死人列伝」

「蜂起には至らず 新左翼死人列伝」 小嵐九八郎 講談社文庫
樺美智子を始めとして「新左翼死人」の系譜をたどりつつ、新左翼そのものの歴史を綴る本。本屋で見かけて、なんとなく気になって読んでみた。自分は世代的には全然後なので、新左翼そのものと直接接点があったことはないけど、この辺の話はある世代のサブカルチャーの人にとっては、基礎教養に近いものみたいだし、そういう人たちが書いたり喋ったりしたものをずっと見聞きしてきたわけだから、脈絡はないながらも言葉や知識の断片くらいは頭に入っていて、関心もあるわけで。

新左翼が、何をどう考えて、どうしてそういう行動に至ったかというあたりが、とてもよく分かる本という印象。あるいは、どうにも分からない所は、その分からなさがよく分かるというか。もちろん著者は特定の党派に居た人なので、内容に何らかの偏りはあるのだろうし、書いてあること全てを丸呑みで受け入れることは出来ないと思うが、現場に居た当事者ならではの説得力があることに加えて、著者自身が、取り上げた人の考え方や行動を理解しようと、長さとか、媒体の制約(雑誌連載だったらしい)などがありながらも、足跡をきっちり追った上で書いていこうとしている姿勢があるからだと思う。
そもそも、彼らの行動の起点になっている問題意識は、自分自身にも身に覚えがあって、今も時々、意識に引っかかって来るような事柄が多いから、こういう風に考えた時に、こういう行動に至るという筋道が、かなり見えやすいのも確か。
三里塚や山谷のような、新左翼の側(という括り方で書いていいのかどうか、やや疑問はあるが)に正当性があると感じられる事件だけでなく、企業連続爆破や連合赤軍の一連の事件にしても、そこに至るある種の必然性はあったのかと思えるし、一方で彼らをそういう暴発的な手段に走らせた背景にある権力側の問題はうやむやにされたまま、暴発した者たちを断罪することで(ある意味、それを口実に使うことすらして)、権力側はどんどん強権的になっていっているよな、とも思う。近年は、新左翼よりもずっと穏健な批判勢力までも、締め付けようとしているものな。まあ、それを可能にしているのは、権力者に対して従順な多くの国民という構図があるわけだから、権力だけを批判して済むことでもないが。

それにしても、内ゲバだけはどうにかならなかったんだろうかと思う。そうやって、無駄に失われた人命の多さが虚し過ぎる。巨大な敵を相手にしている時に、内輪で殺し合うことに、何の意味があったのかと。それは、よく分からないことの一つ。

あと、これを読んで、確かに北方謙三の「水滸伝」は7巻の解説で書かれていたように、全共闘がベースなんだな、というのがよく分かった。権力とは何なのかという問題意識が「水滸伝」の根底にはあるらしく(7巻を読んでいた時に、そういうことを考えさせる部分があるが、それは意識的なものなのかどうかと思ったが、やはり意識的に書いているものらしい)、本書を読んでいると、それはやっぱり全共闘に端を発したもののように思えるし、全共闘の闘争がこうであったならというような悔いも、「水滸伝」には反映されているような気がする。
まあ、そういうことを考えたのには、7巻と本書をほぼ同時期に読んでいたせいもあるんだろうけれど。
(2007.5.24読了)

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投稿: 革命21事務局 | 2008.10.10 16:25

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