感想「ホット・キッド」
「ホット・キッド」 エルモア・レナード 小学館文庫
「キューバ・リブレ」の脇役の息子が主人公。背景は1930年代、伝説的な銀行強盗たちが跋扈してる時代のアメリカ。主人公の早撃ちの連邦執行官補(刑事みたいなもの)と、極悪だがハンパ者な小悪党の、あれやこれやのいきさつを描いた小説だが、さらに、彼ら以上に存在感があり過ぎる男たち女たちが、次々登場して、好き勝手に話に絡み、ほとんど行き当たりばったりのように、様々なエピソードが展開していく。
これだけの登場人物を、こんなややこしい筋立ての中で生き生きと動かして、破綻なくまとめ切ってる筆力は凄い。しかも、79歳の作家の小説だぞ。まあ、かっちりしたプロットがなくて、行き当たりばったりだから書ける、という面はあるのかもしれんが。
解説に、スティーブン・キングが本書をレナードの最高傑作と評している、とかいうことが書かれていて、それはどうかな(ただ、こういう所で紹介されているのを見ると、キングの評って、だいたいいつも大袈裟だが)、とは思うものの、ここまでクセのある人物を揃えつつ、きっちり描き切った作品は、彼の作品の中でも、さすがにすぐにはそうは思い当らない。あくまでも人間模様を描いた小説だし、例によって、サスペンス小説なら山場になるような場面を、知らん顔して盛り下げる方向に展開しちまう作家だから、そういう観点から考えればまた違ってくるとは思うが、小説世界としての完成度を言うなら、レナード屈指の出来と言っても、確かに間違いはないのかも知れない。
ルーリイが、いかにもレナード的なヒロインだよなあ。
(2008.1.18読了)
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