感想「日本の行く道」
「日本の行く道」 橋本治 集英社新書
この人の社会批評は、結論の部分では日頃から自分が漠然と思ってることに、かなり似てることが多い。自分でもそれなりに理詰めしてはしているつもりだけど、そんなに突き詰めてはいないし、そういう所をこの人はきっちり理論展開してくるから、結構すんなり感心しちゃったりする。
本書では、もちろんどこまで現実味があると考えて書いているのかは分からないけども、超高層ビルを全部解体しちまったら、とか、世の中のレベルを60年代前半に戻すってのはどうなの、みたいな、ある意味、極端な提案を書いているが、それに類似したことを自分自身も日頃時々考えているし、でも、それにどれだけ意味があるのかということを、日頃、あんまり考えてはいないが、こういう風に書かれると、確かにそれは意味があるんだよなと思えてくる。
ただ、論理的にすっきりした文章である分、かなり割り切っている部分があることは確かで、そこを本当に割り切ってしまっていいんだろうか、というような疑問も、読んでいて感じないではない。もしかすると、本格ミステリを読んでいる感覚に似ているかも知れない。論理的に筋道をたどって書いているように見えて、実際には結論が先にあって、そこに向けて論理を構築していく、論理にうまく噛み合ない要素はあらかじめ排除してある。そういう構造が見えている感じはある。
帯には「今の日本に漠然としてある「気の重さ」を晴らす」とあり、それは単純化しちまうと、「進歩」への疑念というあたりの話に行き着いて、だから、超高層ビルをなくすとか、60年代へ戻す、という話が出て来る。ただしそれは、「三丁目の夕日」みたいな(見てないけど)ぬるいノスタルジー的な意味合いじゃないんだけど、そこんところの区別は受け取る側の感覚によって、微妙によくわからないかも知れないな。
ただ、いろいろ割り切って書いていたり、全体的に紙幅が足りてない感じもあるので、いまひとつ、最終的な結論が見えにくくなってる感はあり、「気の重さを晴らす」までには至っていない気はする。
今の異常な状態をなんとかして、この先も人間が生き延びられるようにするためには、これぐらい極端なことをしないと駄目なんじゃないか、でも出来ないだろうな、というのが、自分の気分の根底にはあるわけで、橋本治も似たようなことを考えているのかもしれないな、と思った。でも、そういう気分から来る「気の重さ」をいくらか晴らせる、じゃあどうする?というような内容があるのかな、と思って読んでみたが、それはなかった(そこまでは届いていなかった)という印象。
(2008.2.7読了)
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