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感想「現代アートビジネス」

「現代アートビジネス」 アスキー新書

しばらく前に書評で見て、興味を感じた本。
著者は村上隆や奈良美智がメジャーになるきっかけを作ったギャラリスト(という言葉自体、初めて知った)で、ギャラリーを運営者という立場から、現代アートがどんな風に世の中に受け入れられて流通しているのか、というあたりをわかりやすく解説している。
元々は村上隆が、なんで1億円とか10億円とかいう金額で取引されるようになったのか、というあたりに興味があったわけで。村上が非常に戦略的にアートを作ってる人物なんだな、というのは分かった。というか、彼の作品には主張があり、その主張を世の中に出して行くためには戦略が必要だ、という筋道なんだと理解した。戦略が機能することによって、作品が世の中で広く認知され、ある意味、金はそこに付いて来ただけのもの、というような(そこまでは書いてないけど)。でも、コンセプトがあるのは分かるけど、それが具体化された世の中で見掛ける作品となると、フィギアに関しては、マニアが作っているフィギアの精巧なやつとどこが違うんだろう、とか、アニメっぽい絵画についても、こういう風な絵は世の中にいくらでもあるよな、とかいう違和感は消えない。そういうものが日本で溢れているという現象を表現しているというけれど、結果的には類似品を再生産しているだけなのではないの? 海外で高く評価され、日本ではその割りに、というのは分かるような気がする。俺が感じるみたいに、批評の対象のものと紛れて見分けがつかないからだろう。
まあ、そういう分かりにくさ(難解というのとは違う)は、村上だけじゃなくて、現代アートの作品にしばしば感じることだけど。それがなぜビジネスになるのか、というのは、これを読んでも、やっぱりあんまりよく分からない。というか、始まりは、古典的なアートとは違ったアートの誕生への、純粋な驚きから始まったのかも知れないけれど、どこかの時点で、こういう物をビジネス(ビジネスに限らないが)にしたらどうだろうか、というアイディアがいくつも重なり合って、今の巨大な現代アートシーンが生まれてるんじゃないんだろうか。アメリカの抽象アートってのも、ヨーロッパの古典的なアートに対抗するオリジナルなものを立ち上げようという、国家的な戦略が背景にあったという話を、以前聞いた覚えがある。そんなことを、薄々感じた。著者にそういう意図が本当にあるのかどうかは知らないが。
ただ、古典的アートも、ビジネスの構造としては、多分、そんなに違いはなくて、見て、何が描かれているか分かりやすい、という以上の違いはないような気はする。そういう意味では、村上の値段に驚くよりは、有名アートの値段そのものに驚くべきなのかも。実際、そういう違和感も、元々持っていたわけで、村上の件も、単にその延長で感じているだけなのかも知れない。

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