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感想「荒蝦夷」

「荒蝦夷」 熊谷達也 徳間文庫

初めて読む作家だが、宮城出身で、東北を舞台にした冒険小説や歴史小説を書いているらしい。
本書は8世紀に朝廷に対して反乱を起こした蝦夷・アザマロを中心にした歴史小説。先日「古代東北と王権」を読んだ数日後に、古本屋で棚を眺めていて、関係ありそうな書名を見て手に取ったら、あちらで知ったばかりのアザマロという人物名が出て来たもので、読んでみる気になった。
必ずしも、蝦夷=善、大和=悪で、踏みにじろうとする大和に蝦夷が抗するという、単純な構図では書かれていないし、蝦夷の中にも複数の部族が居て、その間でも食うか食われるかの駆け引きが繰り広げられている、かなり複雑な構成を取っている。解説によると、これに先立つ、アテルイを主人公にした小説では、もっとシンプルに善悪の構図を示していたようだが、それ以降、作家の考え方が、そう単純には割り切れないようだ、という方向に振れていったためらしい。(ちなみに本書も途中からアテルイが出て来る)
そういうことなので、一面的な割切りがない点に好感が持てる反面、読んでいて、爽快感もそんなに感じない。アザマロも、キャラのぶれ方が、重層的で深みのある人物像というよりは、人物設定が大雑把という風に感じられないでもなく、いまひとつ魅力に欠けているような気がする。最終的には大和が勝つという史実がある前で、アザマロが野望を語る所に、いまひとつ迫力を与えられていないあたりがポイントかも知れない。考えてみると、北方謙三は、そういう所の描き方が上手い。
絶対的に資料が乏しいことが背景にあるのかも知れない。種々の研究に拠っている部分もあるのだろうけど、大半の部分は作家の想像でしかないはず。想像力を働かせるにしても、ベースになる材料が乏しければ、自ずと限界があるわけだから。
魅力的ではあるが、ちょっと難しい題材だったのかな、という気はした

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