感想「ピンク・トウ」
「ピンク・トウ」 チェスター・ハイムズ 河出書房新社
チェスター・ハイムズの警察物じゃない普通小説? というか、一応ポルノらしいんだが、それにしては刺激が乏しい。艶笑小説という言葉を思い出した(古いね)。原著は1961年の刊行とのことで、邦訳は1969年刊行。人間の文学という叢書の1冊だが、これはかなり怪しい叢書のようだ。
ハーレムを舞台に、そこに住む多数の黒人・白人が入り乱れ、次々騒動が巻き起こる。性的なシーンや描写が非常に多いけれども、あくまでもコメディとして書いている感じで、描写自体もいやらしさはなくて軽い。
カバーには「笑いとセックスを通して人種問題を鋭くえぐる異色の諷刺文学」とあるが、鋭くえぐっているんだろうか? よくわからない。結末で、中心的な登場人物が、人種問題を解決するには黒人と白人でどんどんセックスすること、みたいなことを言う場面があるが、これはシャレというか皮肉というか、それともこの辺が諷刺なのか。まあ、この本が含んでいる内容には、その時代にその場所に居た当事者でなければ分からないものが、確実にあるだろうな、という気はした。
訳は植草甚一で、あとがきで、最初に読んだ時、登場人物がごちゃごちゃして、なんだかわからなくなってしまったと書いている。その後、評判になったので、読み直したそうだけど、読み直してみたら分かったとは書いてない。結局、よく分からないまま、翻訳してしまったんじゃないんだろうか。訳文には、明らかな登場人物の誤りなど、混乱が見受けられる。かなり怪しい翻訳のせいで、原著が持っている意図が分かりにくくなっている可能性はあるかも知れない。
総じて、あまり面白かったとは言えない。もっとも、それは翻訳よりは、背景の文化が違い過ぎるのが原因じゃないか、とは思う。
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