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感想「墓標なき墓場」

「墓標なき墓場」 高城高 創元推理文庫
この作家は、名前だけは随分昔から知ってたが(思い返してみると、本書の解説を書いている新保博久のコラムで見たのが最初だった気がする)、本を見かけることがなかったので、読んだことはなかった。創元から昨年、文庫版全集が刊行されて店頭に並ぶようになって、少し気にしていた所で、今年年賀状を貰った中に、この本を賞賛している人が居たので、読んでみる気になった。

昭和30年代前半の釧路・根室一帯を舞台に、輸送船が謎めいた沈没をした原因を、新聞記者が探る話。時代的にも地域的にも自分にあまりにも接点がなく、読んでいても、いまひとつ掴めない感じはつきまとった。ある意味、エキゾティックな小説を読むような感覚だった気がする。考えてみると、ギブスンの小説の方が、時代だけでなく地理的にも、自分にはリアリティがある。「スプーク・カントリー」の舞台の一部のバンクーバーは行ったこともあるが、北海道東部は全く縁がない。本書で描かれる、ほとんど周囲が見えないような濃いガスが日常的に街を包み、サンマ漁師が札ビラを切りまくる街の風景ってのは、ほとんどファンタジーに近い。
とはいえ、ハードボイルド的なざらざらした人間模様の描き方は、時代を感じさせはしても(それはたとえば結城昌治や都築道夫でも一緒)、非常に上手い。話の転がし方も巧みで読まされた。かなり優れた作家という印象。
丁寧にプロットが組み立てられているが、手が込みすぎていて、解決が唐突に見える感はある。乱歩の影響が強かった時代に書かれた小説だからなんだろうか。長さ的に少し足りない、という気もする。また、真相が見えた時点で浮かび上がってくる何かが、あまりないので、やや余韻に欠けるようにも思える。ただ、その辺の印象も含めて、短編の方が向いている作家という可能性は確かにある。短編集も読んでみるかな。

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