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感想「あなたに不利な証拠として」

「あなたに不利な証拠として」 ローリー・リン・ドラモンド ハヤカワ・ポケミス
MWA短篇賞を取った「傷痕」が収録されている。これは「エドガー賞全集」には収録されていない。連作短篇集から一篇だけ抜き取った形で読まれることを、著者が了解しなかったためらしい。そういうことなら、しょうがないから本書を読むか、という気になったので、思うツボかもしれない。

ルイジアナのバトンルージュ市警を舞台にして、警官の人間像を生々しく描いていく、ミステリというよりは普通小説に近い小説だった。読み始めて、真っ先に思い出したのは、やはり警官出身のジョセフ・ウォンボー。「センチュリアン」しか読んでいないが、あの時の印象にかなり重なり合う。方向性は似ているし、エピソードにも似通った部分があると思った。もちろん時代も地域も違うが、やはりそこには普遍性があるみたいだ。主人公たちがすべて、著者同様、女性の警官という所は大きな違い。とはいえ、女性が警官をやっている、ということ自体は、案外、大きな差異にはなっていないように感じた。女性警官の存在が、それだけ当たり前になっているということなのかな。ただ、主人公の生活のパートナーが警官、という設定が目立つ所に対しては、これが効いているんじゃないかと思う。男の警官の場合は、必ずしもこうはならないんじゃないかな。

人の生き死にと真っ向から向き合う作品が多いので、当然、印象は強烈で、ある意味、この題材を選んだ時点で勝ち、という気はしないでもない。一方、ミステリとしてどうかというと、少し疑わしく感じた。10篇の短篇から成るが、そのうち、確実にミステリと言えるのは半分にも満たないんじゃないか。MWA賞受賞の「傷痕」も、ミステリとしては、かなり卑怯な終り方をしているので、これが受賞作でいいんだろうかとも思った。「生きている死者」のように、確実にミステリジャンルに入ってくる短篇を収録していることで、本書をミステリと見なし、その上で、一番強い印象の「傷痕」を選んだ、というような展開なのかなと、想像してみたりして。
もっとも、描写の確かさ、力強さやアイディアも感じさせる本なのは間違いなく、きっちり優れた小説になっているのは、やはり著者の力量が物を言っているんだろう。

奥付けを見ると、2006年の2月に初版が出て、4月にもう4刷になっているので、かなり売れたようだ。その年のミステリのベスト投票で1位を取ったりもしているそうだけど、全然知らなかった。まあ、そういう評価をされても不思議ではない小説だとは思う。

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