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感想「WIFE OR DEATH」

「WIFE OR DEATH」 エラリー・クイーン SIGNET DOUBLE MYSTERY
エラリー・クイーン名義の未訳のペイパーバックオリジナル。代作者はリチャード・デミングらしい。

地方都市で新聞社を営む主人公が、男遊びの激しい妻が殺されたことで犯人と疑われ、自分の潔白を示すために、真相を追い始めるという話。容疑者は、妻と寝ていた(可能性のある)町の男たち多数で、調べているうちに現れて来る手がかりによって、そこから次第に絞り込んで行く過程が、割と丹念に描かれている。また、ある程度、話が進んだ時点で、話の落ち着き先は見えてくるのだけど、そこからさらにもう一段進まないと、真相には到達出来ない構成になっており、容易には尻尾をつかませないあたりも巧い。もちろん、本格ミステリではなく、あくまでもサスペンス小説なので、そこはそれなりではあるが。
主人公の複雑な感情の描写や比喩的な表現も結構巧み。ハロウィーンの仮装パーティから話は始まるが(しかし、アメリカ人てのは、いい年こいてからも、こんなことをやっているのね)、主人公が、親友の夫婦は妻がピーターパン、夫がフック船長の扮装で調和が取れているのに、自分たちは、三銃士のアトスとクレオパトラで、何の関係もありゃしないと、自虐的に考えるシーンなんか印象的。
単純に小説としても、割と良い出来と思うのだけど、加えてクイーンの正典との関連で興味深いのが、ライツヴィルものとの相似。閉鎖的な町の中での陰湿な噂の蔓延が、標的になった人物を苦しめるという光景は、ライツヴィルものの中に何度か出て来るが、「災厄の町」でジム・ハイトを見舞ったような嫌がらせが、本書の主人公(こちらも名前がジムなのは偶然か?)にも降り掛かる。悪意のある噂を町中にばらまく二人の女は、ライツヴィルのエミリーン・デュプレを思わせるし、その他の人物配置もライツヴィルものを感じさせる所が結構ある。たとえば、主人公はジム・ハイトとライツヴィル・レコードのフランク・ロイドの混合のような存在と考えられるし、エド・ホチキスを思わせるタクシー運転手が出て来たりもする。カントリー・クラブに集う、町のミドルクラスの人々というのも、かなりライツヴィル的。というより、むしろ、アメリカの地方都市の風景そのものなのかも知れないが、通じ合うものが感じられるのは確か。
これまでに読んだペイパーバックオリジナルは、クイーンらしさをあまり感じさせないものが多かったが、本書はそういう意味でちょっと違っていて、正典のファンにも、いくらか興味深く読める小説じゃないかと思う。

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