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感想「日本人の誇り」

「日本人の誇り」 雁屋哲 飛鳥新社
「美味しんぼ」の原作者がオーストラリアに移住した時に、太平洋戦争当時、日本がオーストラリア本土に攻撃を仕掛けていたことを知って、オーストラリアと日本の太平洋戦争への認識のずれを痛感し、当時、オーストラリア、マレーシア、シンガポールで日本軍が何をしたかということを調べたいきさつをまとめたもの。

おおざっぱにまとめると、日本は太平洋戦争以前と、戦後の荒廃から立直ったことに関しては、世界に誇れるものを持っているが、日本軍が太平洋戦争で行った残虐行為が、それを主張出来る立場を破壊してしまった。「日本人の誇り」を取り戻すために、あの時代にやってしまったことをしっかり認識した上で、後始末(アジアを侵略したことを認め、謝罪し、個人に賠償)するべきだ、ということを言っている。

納得しやすい論旨ではあると思うが、少し話を単純化し過ぎていないか、という気はする。たとえば、個人に賠償という点をとっても、いまさら、被害者に確実にそれが渡るのか?ということだけ考えても、そんなに単純なもんじゃないだろうと思うし。
そもそも、太平洋戦争以前の日本が、それほど立派だったのか、という点にも疑問がある。琉球や蝦夷に対してやってきたことなんかを考えても、単に機会がなかっただけで、太平洋戦争の時代だけが異常だったと、本当に言い切れるのかどうか。
ただ、あの時代に日本がやったことを、しっかり認識するのが、重要なとっかかりになるのは確かだと思う。たとえば、著者は「皇国史観」が根源にあると言っているし、それは的を射ている気がするけれども、そうであるなら、なぜそういう思想が信奉されて、そういう結末に至ったかということを明確化にした上でなければ、二度とこんなことは起きないということを言っても、外国に納得させるのは難しいはず。
日本軍は侵略なんてしなかったという主張は、かなり声高に述べられているし、要人がそういう発言に軽々しく同調するような気配を見せることもあるから、そもそも、日本の国としての公式見解は分かりにくい。それではなおさら外国から信用されないわな。内側に居ても信用出来ないと思うもの。
もし、「侵略してない」が公式見解だというのなら(個人的にありえないと思うが)、それを納得してもらえるだけの説明をする必要があるはずだが、それもやっているようには見えないし。まあ、侵略してないと言ってる人たちは、それをやれと言っているのだろうけど。

ちなみに本書は1995年の刊行なので、ちょうど村山富市が首相だった時期ということになる。不戦決議とかがあった微妙な時期かな。
で、この後、根拠もなく「日本人の誇り」をやたらと主張したがる時代が来るわけだが、この著者はそれをどう見ていたんだろうか。

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