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感想「金蠅」

「金蠅」 エドマンド・クリスピン ハヤカワポケミス

クリスピンの1作目。ジャーヴァス・フェンもの。
オクスフォードでの芝居の上演のために、入り組んだ人間関係の人々が集まって、雰囲気が緊張する中で嫌われ者の女優が怪死し、大学教授のフェンが調査に乗り出すという話。

最初の方は割とドタバタした感じがあったので、いけるかなと思ったが、コメディの部分があんまりペースが上がらず、普通の本格ミステリの範囲内に収まった印象。都筑道夫が解説で、「馬鹿騒ぎの面白さ」というようなことを書いているけれども、本書だけを読んでの評ではないと思う。実際、他のも読んでいるようだが。「お楽しみの埋葬」や「消えた玩具屋」は、当時、「金蠅」に引き続いて刊行されたんだろうか。そうでないと、都筑道夫の文章は、いまひとつずれているとしか思われなかったんじゃないかという気がする。

普通のイギリス本格ミステリとしての、おっとりした楽しさはあるが、謎解きの部分がちょっと引っかかった。真犯人しか偽装工作が出来なかったんだとしたら、偽装ではなかった場合、その人物も犯人ではありえないという結論になるだけで、他の人物が犯人という可能性はそもそもなかったんじゃないだろうか。そこの部分を何度か読み返してみたが、そうとしか思えなかった。何か読み違えているかな。
実際はその通りなんだが、ミスディレクションとして意図的に読者を、複数の容疑者が居るという方向に引っ張ったということは考えられる。ただ、読後に引っ掛かってしまうのは、あんまりうまく書けてない証拠だと、日頃思っているので。

全体としては、いまひとつの出来だったかなと思う。まあ、第一作だから。
以降の作品にこだまが響いてる感じの要素がいろいろあるのは興味深かった。特に「白鳥の歌」は、同じように演劇を題材に取って、随分、再活用されている感じ。プロットの構成も、他の作品と共通したものがあり、それがクリスピン風ということになるんだろう。

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