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感想「鏡の中のブラッディ・マリー」

感想「鏡の中のブラッディ・マリー」 ジャン・ヴォートラン 草思社

横暴な軍曹を殺すことにした男の行動を皮切りに、人々が次々に騒動に巻き込まれて、破滅に向かっていく話。
軍隊での非人間的な情景の描写から始まり、警察への嫌悪感や、付和雷同して流されて行く人々への侮蔑などが感じ取れることから、社会批判的な意図があるんだろうかと最初は思っていたが、読んで行くうちに、実はあまり関係ないような気がしてきた。どちらかというと、気に入らないものにむかっ腹を立てて、噛み付いているだけ、という状態に近いんじゃないのかな。それが時代(原著は1978年の刊行)の空気を表したもので、それこそが著者の狙いなのかも知れないが。時代も国も違うけれども、感覚的には自分にも、そういう気持ちは分かるような気もしないではない。
基本的には、破綻した変人たちが繰り広げるドタバタを描いたコメディだと思う。主要な登場人物は、みんなどこかが異常。ただし、その異常ぶりはどれも、不健康な屈折をしているので、コメディといっても、陰鬱でブラックだ。エロティックで、グロテスクで、暴力的で、いかにもフランス小説っぽい、過剰な感じ。

重要人物の一人で、二重人格の女性の名前がフランス(その別人格がタイトルのブラッディ・マリー)であることには、何か意味があるのかも知れない。偏執的に秩序を重んじる彼女の夫の刑事がドイツ系だったり、フランス(というかマリー)が誘惑して破滅に追いやる男がアフリカ人だったりすることを考えると、なおさらそんな気がする。
軍曹を殺そうとする青年の生母がアメリカに強い憧れを持っていて、その憧れが夫や息子に受け継がれていることにも、何か含みがあるようにも思える。夫が下水道で双頭の巨大な鯉(白鯨に例えられている)と戦うエピソードにも、絡んでいるのかも。それが何なのか、よくわからないけれども。

わからないながらも、どんどん話が進んでいくし、華々しい展開が続くので、一気に読めてしまったし、面白い小説ではあったと思う。それでは上っ面だけで、もったいないような気はするが、意味をつかむためには、多分、当時のフランスのいろいろなことを知っている必要があるんだろうし、それはかなり面倒。

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