感想「犬なら普通のこと」
「犬なら普通のこと」 矢作俊彦+司城志朗 早川書房
全編沖縄が舞台(那覇周辺か?)で、情景をかなり細かく書き込んでいるので、土地鑑のある人間には、観光小説としてはかなり面白いんじゃないかな。小説自体は例によって、かなりクセがあるから、好き嫌いが分れそうだが。
組織のカネをかっぱらって、日本からオサラバしようと企んだヤクザ者が主人公。最初に立てた計画が、予想外の出来事の連続でグチャグチャになっていく中、必死で奮闘するスラップスティックな展開と、主人公を含めた登場人物それぞれが背負う重い過去が醸し出すドラマが読み所。
いかにもこのコンビという中身で、文章も会話も場面も洒落てるし、情報量は多いし、達者に書かれていて、ちゃんとした出来の活劇小説だと思う。ただ、登場人物たちの過去が重過ぎて、ちょっともたれる感じだ。しかも、どの過去も似たような方向性なのが、工夫がないようにも見えてしまう。日中米の三国の狭間でもがく人々という構図で、もちろん小説そのものがその辺をテーマにしているから(舞台を沖縄に取ったのも意図的なんだろう。というか、どっちが先か分からないけど)、それに沿った設定ではあるし、それはそれであるべき姿なのかもしれないけれど。犬のモチーフにしても、繰返し使われる割にはあまり効果的ではないような。
ところでエリマキの名前は、やっぱり英世なんだろうな。そうすると森という名前も(岸田森との連想で)意味ありげではある。まあ、性別が逆だから実際は違うだろうけど、矢作が最近「傷だらけの天使」に関わっていたわけだから、名前のアイディアのヒントくらいにはなっているのかもだ。
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