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感想「闇の奥」

「闇の奥」 ジョセフ・コンラッド 三交社
「地獄の黙示録」の元ネタで、あっちでは特別な位置にある文学作品らしいということも聞いているので、一度読んでみたかった。
アフリカ(コンゴ)に商社員として赴いた男(クルツ)が、ジャングルの奥の荒野(wilderness)の中で現地人を従えて王のように暮らしていたが、次第に狂って死んで行く。ロンドンから現地に赴任した語り手が、クルツに共感を覚えつつ、その死にざまを見届ける話。前者が「地獄の黙示録」でのマーロン・ブランドで、後者がマーティン・シーンに相当するわけだけど、正直、「地獄の黙示録」はテレビで1回見たっきりで、まともに話を覚えてない。中心構造をそのままに、舞台をコンゴからベトナムに持って行った話のようには思えるが、実際はもっと込み入っているらしい。

小説としては、そんなに面白くはなかった。全体的に曖昧な書かれ方をしていて、わかりにくいし、肝心なクルツの人物像にしても、いまひとつピントが合って見えて来ない。

興味深くて、いろいろ考えさせられたのは、訳者(藤永茂)による詳細な注解の方。そこを読んで、本書の欧米における位置付けについても、文学表現において重要な英語文学作品のひとつとされているということと、植民地主義について描いた本として、いろいろ論議されているというあたりのことは分かった。
元々はアフリカのwilderness(一応、荒野と訳しているが、含意を適切に表現出来る訳語がないそうだ。確かに本来の日本語では、ジャングルを「荒野」とは言わない。読んだことはないが、T・S・エリオットの「荒野」ってのもこれなんだろうか)の魔性が白人を狂わせるというテーマの本としてとらえられていたのが、白人のアフリカ侵略に対する批判が確立していく中で、植民地主義批判の書として読み替えられていったというようなことのようだ。ただの通りすがりで研究者じゃないので、深入りするつもりはないが、本書を読んだ印象としては、前者の捉え方の方が妥当なようには思える。というか、仮に後者の意図が読み取れるとしても(それは誤りというのが訳者の見解のようだが)、本来のテーマとしては、やはり前者なんじゃないんだろうか。少なくとも、小説として読んで印象に残るのはそっちの方。

そういえば、「地獄の黙示録」についても、多分、ちょっとずれてはいるけど、似たような議論があったような記憶がある。ベトナム戦争批判の映画だとか、ベトナム人の視点がないとか、そんなような。

他にも、イギリス等による、ベルギーによるコンゴ支配への批判(ただし、自分たちの植民地支配は正しいという前提)という面があるようで、そこも解説の論点になっている。
コンゴというのは、アフリカの中でも特別な場所のような感じ。ゲバラが潜入してるし、モハメド・アリも試合をしたし、今も混乱が絶えないし。その原点がベルギー領コンゴということなのかも知れない。19世紀から20世紀にかけての、ベルギーによるコンゴでの大虐殺の話は、断片的に読んだことはあるが、ここまで大きく扱われているのを見たのは初めてだと思う。

並行して読んでいた「タスマニア最後の「女王」トルカニニ」という本がまた、イギリスによるタスマニア侵略を書いた本で、妙なめぐりあわせだった。というか、そっちはそういう本なのは分かっていたが、「闇の奥」を読んでそういう所に入っていくとは思っていなかった。

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