感想「囚われの世界」
「囚われの世界」 ハリイ・ハリスン サンリオSF文庫
閉ざされた谷の中のアステカの部落で育った青年が、進歩のない世界に耐えられず、外へ出て行こうとすると、そこにはとんでもない異世界があったという話。
ハリイ・ハリスンは何冊か読んでいるが、面白いけど、いまいち食い足りない、ちょっとゆるいユーモアSFの作家という感覚だった(それだけの作家じゃないことは分かっているが、読んだものはそういう傾向のものばかりだったので)。しかし本書は方向性が違っていて、意図的にユーモアは目指してないシリアスなSF。そういう中で、文章や主人公のキャラクターにユーモアが感じられるのは、むしろかなり効果的で、深みのある小説になっていると思う。多分、いままで読んだこの作家の長篇の中で、一番納得が行った作品じゃないかと思う。
主人公が知る真実ってのが結構凄くて、いかにもSFだなと思った。同様なアイディアの作例は他にもあるんだろうが、そんなにSFを読んでいないので具体的には知らないこともあり、そういう話だったのかと感心した。当然、現代社会に対する風刺的な意味も込められているんだろうけれど。マニュアル通りにしか動け(か)ない人間に対する批判というか、皮肉というか。
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