感想「ボーア戦争」
「ボーア戦争」 岡倉登志 山川出版社
19世紀末から20世紀初頭にかけて、現在の南アフリカ共和国の地域で起きた戦争についてまとめた本。ある意味、今の南アフリカ共和国の原点になる出来事で、今年はサッカーのワールドカップもあることだし、というので、読んでみることにした。
元々は黒人が住んでいた土地に入植した白人が居て、それがボーア人を形成した(主にオランダ人と思ってたが、確かに比率は大きいものの、必ずしもそうではなかったらしい)。そこへイギリスが入り込み、しかも、その地域でダイヤモンドや金が発見されたことから、イギリスは血眼になって取りに来て、主にそれを理由にして、先住のボーア人との戦いになった。それがボーア戦争。
最初にこの戦争の名前を目にしたのは、シャーロック・ホームズを読んだ時(コナン・ドイルとボーア戦争の関わりについても、本書ではかなりページが割かれている)。その後も、主に翻訳小説の中で、時々目にはしたが、なにせあまり関心のない地域だし、本書のあとがきにもある通り、そもそも日本人にはあまり興味を持たれてない戦争でもあるから、漠然とした知識しかない状態で今日まで来ていたが、ようやく全体像が見えた。なんであんな所で白人同士が戦争してたんだろうか、という疑問も漠然と持っていたが、そういういきさつだったか。全体を概観しつつ、適度に深く書かれている本で、ボーア戦争について知りたいと思った場合には、本書はかなり有効だと思う。そういう場合がどれだけあるかはともかく。
あとがきではこの戦争で利権を求めて侵攻したイギリスの行動を、イラクに侵攻したアメリカになぞらえているが、ボーア人自体が元々侵略者だったわけだから、そう単純には比較出来ないかなという気がする。しかも、戦争後にイギリスは(元々黒人差別的な傾向の強かった)ボーア人に譲歩する形で原住民(黒人)を抑圧する体制を作り、それがアパルトヘイトにつながったといういきさつがあるようで、その辺のややこしさも含めて照らし合わせるのは、ちょっと強引なんじゃないかと思う。もっとも、現代に照射するものは何か、というのを常に考えながらやっていないと、歴史研究ってのは、単なる好事家の道楽になってしまうのかも知れず(自分自身がこの本を読んでいるのも、そんなような次元だが)、研究者としてはそういう感覚は必要なものなのかも。
白人同士の戦争に巻き込まれてしまった黒人の状況というのも興味深く、よく分からなかったあの辺の国や民族の成立ちが、だいぶ分かってきた気がする。レソトもスワジランドも、地図を見ながら、妙な位置にある国だなと、昔から思っていたんだ。それにしても、随分聞き覚えのある地名が多かった。以前、ラグビーのワールドカップがあったし、今年はサッカーのワールドカップがらみで、報道が増えているから、自然に地名が入っていたものらしい。 思っているほど、縁遠い国ではないのかも。
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