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感想「マルタの鷹」

「マルタの鷹」 ダシール・ハメット 創元推理文庫
そういうわけで、読み直し。
以下は、いまさらではあるが、若干ネタバレ気味の感想。

これのどの辺が名作かというと、やっぱり文体・文章なんじゃないか、という気がする。主人公の内面描写が全くない、いかにもハードボイルドな独特な文章。これが書かれた当時、非常に斬新だったというのは想像に難くないし、追随者が数多く現れて、「ハードボイルド小説」というジャンルが生まれたというのもよくわかる。でも、追随者の小説を数多く読んでしまった後で読むと、当然のことながら、そこはそれほど刺激的ではない。もっとも、ここまで徹底的に内面描写を排した小説というのは、追随者の小説の中にも、おそらくほとんど存在していないけれども。
お宝争奪戦という、リアリズムを追求した私立探偵小説にしては、少しロマンチックな感じの題材には、奇異な印象がないでもない。
エフィーとスペードの関係も、何となく分かりにくい。「スペード&アーチャー探偵事務所」を読んで、翻訳の問題があったんだろうかと思ったが、確かにそれらしい箇所もないではないが、全てがそうとも思えない。
さらに一番奇妙な感じを受けるのは、嘘で塗り固めたようにしか見えないブリジットを、エフィーが(なぜか)全面的に信頼していること。ただ、スペードがブリジットを突き放せないのも奇妙だと思っていたんだが、今回読み直してみて、少し分かった気はしたのは、スペードは最初からブリジットが犯人の一人だと分かっていたはずで(最後の推理を見れば、それは明らか)、彼の行動は、おそらく全てそれを前提にして考える必要があるんだろう、ということ。内面描写が全くされないので、彼が何を考えているのかというのは、行動から推し量るしかなく、そこではこの前提が大きく意味を持ってくるはず。そういう意味では、実はこれは相当高度な読解力を要求される本なのかも知れない。よく分からないのも当り前なのかも。

もっとも、この本に関しては、既にいろんな研究が存在しているはずなので、よく知らない人間が、今さらごちゃごちゃ書いてもしょうがないな、という気はする。
しかしそう考えると、「スペード&アーチャー探偵事務所」は随分分かりやすい小説だな。

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