「インビクタス」
秩父宮で、いやってぇくらい予告編を見せられた映画。1995年の南アフリカ開催のラグビーW杯での南アフリカチーム(スプリングボクス)を描いたもの。
ネルソン・マンデラが大統領に就任してからW杯決勝までの約1年間をたどっていくが、かなり駆け足で、事態の推移を追うだけで精一杯という感じ。その原因のひとつは最後のオールブラックスとの決勝の再現に、かなりの時間を割いているからで、それはそれでやむを得ない選択だとは思う。ちなみに、「感動」を期待する向きには、予告編だけで充分なんじゃないだろうか。むしろ、うまくまとめられているので、予告編の方が感動的かもしれない。ただ、予告編ではサワリくらいしか流れてなかったラグビーのシーンはかなり迫真的。ペナルティキックの場面で、思わず、入りそうだな、とか呟いてしまった(^^;。もっと試合のシーンが多くてもよかったね…映画の趣旨と違うだろうが(^^;。
スプリングボクスが、マンデラの後押しによって、白人だけのものから全国民のものになっていく過程は、感動的ではあるものの、やっぱり実話だし、ほんの15年前のことに過ぎないから、いろいろ配慮しないといけない先も多そうで、殊更に劇的に作ろうとしても限界があるはず。その辺にも物足りなさの原因があるかも知れない。決勝の試合そのもののドラマに負けてしまっているのかも。
なぜこの映画が今作られたのかいうと、やっぱり南アフリカ開催のサッカーW杯が今年だというのと関係があるんだろうな。あの時の再現を期待する向きがあるのかも知れない。そして、見てないからよく知らないけど、近作で異人種同士の融和をテーマにして映画を作っていたらしいクリント・イーストウッドが、南アフリカで黒人と白人が融和する一つの大きなきっかけを作ったこの大会に、題材として魅力を感じたか。製作者にも入っているモーガン・フリーマンが、そこで橋渡しをした、みたいな感じかな。フリーマンはネルソン・マンデラと交流があるそうで、この映画でマンデラを演じてるのも彼。よく似ている。
国の統合の象徴としての代表チームということを、いろいろ考えさせられた。国歌や国旗の問題も含めて。ただ、アパルトヘイトという特殊な状況を経て、対立し合う二つの集団をまとめていく必要がある国と、住民の大半が昔から均質な文化の中に居る日本みたいな国では、そういうものの存在意義は全く違うはずで、それを一緒くたにして考えてもしょうがないよな、ということも思った。
ちなみに、決勝の相手チームのニュージーランドのことをマンデラが知りたがって、この大会での戦績を教えてもらう場面があるが、そこで不意打ちのように日本戦 145-17というセリフが…。日本ラグビー協会は、こんな映画を宣伝している場合じゃなかったかもしれない(^^;。
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