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感想「偽書「東日流外三郡誌」事件」

「偽書「東日流外三郡誌」事件」 斉藤光政 新人物文庫
津軽に古代王朝があったという「史実」を示す古文書「東日流外三郡誌」が、現代になってから捏造されたものであることが明らかにされていくまでのいきさつを、当時、取材に当っていた(というか、捏造疑惑を追跡する中心人物だったようだが)東奥日報の記者がまとめたもの。「東日流外三郡誌」は、そういう胡散臭い史書がある、ほぼ偽物らしい、というのを知っていたという程度の事前知識。
本書を読んでいると、「東日流外三郡誌」は、あまりにも稚拙な捏造のようで、こんなものがなぜ信じられて広まったのか不思議なくらいだけど、その辺のいきさつについても本書は考察している。「東日流外三郡誌」の捏造が暴かれるいきさつも面白いが、それ以上に、この程度の代物が流通してしまった背景が興味深い。事無かれ主義とか、嘘と分かっていても、利益になるなら、面白いならいいという意識で使おうとする受取り手の問題とか、いろいろな要素が重なっているわけだけど、容易に再発しそうな構造でもある。この程度の話なら、まだお笑い程度で済むが、もっと深刻な問題に発展する可能性もあるわけで、本書はそういう事態への警鐘という意味も込めているものと思う。
まあ、その辺を突き詰めていくと、この問題についても、本物だと主張する側の方の見解も見た上で、判断しないといかんということになるとは思うけれども。

それはそうと、戸来伝説とか竹内文書ってのも、ここまではっきり、でたらめだというのが分かっているとは知らなかった。マニアじゃないんで、雑誌とかにぽろっと取り上げられてるのを見ているだけだから、なんかイカサマくさいなとは思っても、真偽は曖昧なままなのかと思っていた。誰がでっちあげたという所まで明確に分かっているんなら、そもそも取り上げるに値しない嘘だということになるんじゃないのかね。要するに、そういう所にしらんぷりして、興味本位で取り上げ続けることが、「東日流外三郡誌」みたいな事件を生むわけだな。

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