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感想「独り群せず」

「独り群せず」 北方謙三 文春文庫
「杖下に死す」の続篇。10数年経って、前作の最後で武士をやめて料理人になった主人公の利之は、一流の料理人になった後、半ば隠居している状態。前作の背景に置かれていた大塩平八郎の乱のような大きな事件は今作にはなくて、幕末の荒れた世相に絡まれながら、日々を過ごしていく利之(と周囲の人々)を描いていく。
前作は利之と友人との交流の爽やかさが印象的で、いかにも若々しい感じだったが、今作は、まだ枯れてはいないとはいえ、老境に入った利之を描いていて、大きな事件を中心に据えずに、淡々と日々が過ぎていく構成は、内容に合っているように思えた。
そうは言っても、事件が全く起きないわけじゃないし、主人公の超人的な剣豪ぶりは、あちこちに出て来るが。そこは娯楽小説として必要な要素でもあるし。
前作の事件の時に深く関わりあった親しい人々を全て亡くして、タガが外れかかった状態になっている利之は、「煤煙」や「擬態」の主人公のようにも見える。このあたりにこの時期の北方のテーマがあるということなんだろうな。もっとも、北方の時代物の登場人物が変に屈折していない、気持ちのいい人物であることが多くて、それは今作も同じ。主人公や彼を取巻く人々に素直に共感して、気分良く読める小説だった。
(2010.8.20)

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